2019年4月より、どんな大企業でも社員数が少ない企業でも一定の条件のもと、有給休暇の習得が義務化されました。
労働者としては「法律で決まっちゃったから、仕方ないよね」と、堂々と休む口実ができてうれしい限りですよね。
ただ、管理職として見ると現場レベル、特に少人数のチームで仕事を回している場合は結構な影響がでます。
もともと人数が少ないチームが、有給休暇の習得でさらに少なくなったタイミングで大量の仕事が来ると目も当てられません。
この記事では中小企業で少人数チームのリーダーをしている私が、有給休暇の義務化に向けて取った3つの対策を紹介します。
- 日々細かな仕事が発生する
- 途中で差し込まれる、今日来て明日出しの仕事が入る
- どんな仕事が入ってくるか直前までスケジュールが読めない
- エース級の人がいて、依存している
この辺りの悩みは業種や業態が違っても、少人数のチームではよくあることではないでしょうか?
実際に私も有給休暇が義務になるにあたって、悩んだ部分です。
会社の風土によって程度の差はありますが、有給休暇に向けて対策をするのとしないのでは雲泥の差が生まれます。
しっかりと対策をして自分はもちろん、チームメンバーにも働いてもらいやすい職場にしましょう。
対策しなければ負担は自分の肩に
有給休暇の義務化にあたっては経営者向けや、一般社員向けの記事やニュースを見かけます。
反対に中間層に向けた記事などはあまり見かけません。
一般社員と違い、リーダーや係長は管轄している職場の仕事全体を回す必要があるので、有給休暇の義務化に対して100%喜べるかは微妙なところ。
(もちろん、有給休暇の消化率は100%を目指すべきですが……)
有給休暇は、申請された日程に対してよほどの理由がなければ変更することは許されません。
従って「その日はちょっと……」と言うのではなく、誰がいつ抜けてもよい体制にしておくことが重要です。
▼有給休暇の義務化に伴った法律や罰則はこちらの記事 をどうぞ
ただし、その体制も「Aさんが抜けるから、その日の仕事が管理職の私がやろう」では自分が潰れてしまいます。
チーム全体でしっかりと「しくみ」を作って、仕事が回る体制にしてしておきましょう。
1.チームメンバーの主な仕事の進捗や不安を全員で共有する
大人数の部署やチームでは非効率かもしれませんが、同じ部署の少人数のチームであれば業務内容も似通っているはず。
そこで週に1回、5分のミーティングを行い、各自の主な仕事の進捗を全員で共有します。
そうすることで、メンバーが有給の時に「Aの案件の進捗って、どこまでだっけ?」と、他部署に聞かれても大きく外れない精度で答えられます。
ここでのポイントは2つ。
- 「主」な仕事の進捗を発表するだけに留める
- 不安な点を共有する
この2点です。
「主」な仕事の進捗を発表するだけに留める
これは単純に時間の問題です。
少人数のチームとはいえ、メンバー全員の仕事を事細かく発表していたら1時間は軽く経過します。
単純な「報告」に割く時間は最小限に留めたいところ。
あらかじめ、発表する案件を各メンバーに精査してもらい、ミーティングに臨むようにしましょう。
また、発表する案件を厳選することで、ミーティングに上がるのは重要な仕事に絞られます。
ここで上がらない仕事は、トラブルなどもなく比較的順調に進んでいる案件のはず。
有給休暇を取る際も、障害になりにくい案件ともいえます。
そういった仕事は各メンバーに完全に任せておきましょう。
順調に進んでいる仕事にまで、管理職のリソースを割く必要はありません。
不安な点を共有する
これといってミスは無いけど、なんとなく心配。
そんな『もやもや』とした気持ちになる仕事は誰でも1つや2つはあります。
そういう「なんとなく心配」を共有することで潜在的なリスクを下げます。
もしくは「みんなにも言ったから、なにかあっても対応しやすい」そんな気持ちになることも目的の1つです。
前もって怪しい案件や箇所が話題に上がっていればトラブルの際も「あー、あそこか」と初動がスムーズになります。
直接有給休暇に影響するか、微妙なところですが担当者不在でもトラブルにスムーズに対応できることも重要なポイントです。
トラブルが発生したら、有給の時でもガンガン携帯が鳴る様では安心して休めませんよね。
2.休む前にタスクを文章化して伝える文化を育てる
同じ部署内の有給休暇がなぜ嫌われているか、というと『休んだ人の分の仕事を誰かがやらなければならないから』に尽きます。
ただ、日々仕事は発生するので完全に仕事をゼロにして休むのは、あまり現実的な方法ではありません。
やはりここは複数人で仕事をしているのではあれば、人の力を借りるべきです。
前もってやるべきことが分かっていれば有給を取った人以外も、どの程度のリソースが必要か分かります。
仕事で1番嫌なことは、立てていた予定が崩れて帰れなくなることではないでしょうか?
それを前もって「こんなタスクが発生します、この仕事を代打でお願いします」と、伝えておくことで当日のリソースを確保しておきます。
ポイントは『タスクを文章化して伝える』ことです。
具体的にこの仕事をこのレベルまで、この案件をこの人に提出、など内容とゴールを明確にしておくことが目的です。
仕事の内容が分かっていれば、それに対するリソースを用意しておけばOKです。
3.仕事の属人化を避ける
エース級の人が仕事をゴリゴリ進めているタイプのチームは、その人が有給休暇のときに仕事が詰みます。
そうしない為にも、チームメンバー全員がある程度同じ水準のレベルであることが求められます。
ただ、そうはいっても簡単にマネできないレベルの仕事をするからその人はエース級なのであって。
一朝一夕にエースになれるわけではありません。
ただ、そもそもの目的は有給休暇をチーム全員が適切にとれることです。
エース級の人が1週間や1カ月休むわけではありません。
有給で休む1~3日程度を乗り切ればOKです。
短期間を乗り切るのであれば方法はいくらでもあります。
- 必要な部署にエースが休むことを周知しておく
- 事前に仕事を外注に振ったり、前倒しして進め、リソースを確保しておく
- 特にエースに次ぐ、準エースはできるだけ仕事量を減らし、当日に備える
もちろん、平行してチームメンバーの能力アップは必要ですが、有給休暇の為に数日間、エースが居ない穴を埋めるのは意外と簡単です。
また「あの仕事はAさんじゃなきゃ解らない」みたいな仕事が会社には結構あります。
それらも前もって1つ1つ潰しておきましょう。
仕事は段取り8分。
普段から前もって準備しておくことで、スムーズな有給休暇取得を目指したいですね。
管理職だって休みたい
チームメンバーが休みやすい環境を整える、ということは結果的に自分も休みやすい環境になります。
少人数チームの管理職が1番やらなければならないのは「有給をとる為に、お互いにフォローしあう空気感」を作ることです。
ギスギスした空気で「なんでアイツが勝手に休むのに、アイツの仕事を俺がやるんだ」とか、思っていてはお互いに気持ちよく有給は取れませんよね。
少人数チーム管理職として、最初は少し大変かもしれませんが有給をとる人がいたら積極的にフォローをして、少しづつチームに「有給を取るためにフォローしあう空気感」を作っていきましょう。
会社側が特別に対応してくれなさそうであれば、こちら側から勝手にしくみをつくって行動していくしかありません。
▼会社が動いてくれない場合の記事はこちらをどうぞ
しばらく続けていけば、自分が有給を取るときにも気持ちよくフォローしてもらえる関係が作れています。
義務化、というと押し付けられている様に感じますが、この機会を上手く利用して働きやすい職場環境にしていきたいですね。