2019年の4月から始まった有給休暇の義務化。
今までは罰則が無かった有給休暇習得ですが、これからは必ず取らせなければいけない義務になっています。
これによって『なんとなく有給を取りづらい空気』だった会社が「法律で決まっているので有給とります」と、少しでも有給が取りやすくなるといいですね。
ただし、中には制度の穴を攻めて脱法的に働かせようとするな悪質な会社も。
会社指定の休日を減らして、穴埋めを有給でさせる、なんてケースもあります。
では、実際に どんなケースがあって、どんな対応をするのがよいのでしょうか?
有給義務化で逆に休みが減る?
ライブドアニュースで紹介されていたニュースは、制度の逃れ方としては質が悪いです。
有給義務化で5日休みが増えるだろうから、10日くらい休み減らすね、と休日を減らされた例が記事になっています。
ただでさえ、業種によっては有給休暇の習得率が極端に低い中で、非常に残念というか、腹が立つ事例といえます。
書類の画像を見せてもらうと、これまでは「土日祝」を合わせた日数を「公休」としてシフトを組んでいたのに、一律で「月9日」にすると書かれていた。
月9日だとすると、年間の休みは「108日」。土日祝日休みなら、年によって差はあるが年間「120日」ほどが休日とされる。つまり、この会社では公休が10日以上減ってしまったことになる。
露骨すぎるくらい露骨な有休休暇の義務化対策。
そこまでして、従業員に働かせたいのか理解に苦しみます。
法律的には?
違法か合法かの2択でいうならば、 現状では『合法』です。
厚生労働省の回答としては『有給休暇義務化制度の趣旨とは異なるので、望ましく無い』と、いう微妙な解答。
はっきりと違法と書かない辺りが色々な大人の事情を感じさせます。
とにかく現状では残念ですが有給休暇義務化と、会社の制度としての休日は別で考えられています。
もっとも、会社の休日は簡単に変更はできません。
会社の休日は「就業規則」によって決まっていて、その就業規則は労働組合などを通さないと変更はできません。
会社の休日が変更になった、ということは労働組合がOKしたのか、それとも会社側が勝手に変更したか、のどちらかになります。
当然、会社側が『勝手』に変更した就業規則は無効なのですが……。
会社は労働者は訴えないと思っている
会社の経営者は、従業員から訴えられるとは思っていません。
特に東証一部に上場している巨大企業なら別ですが、日本の会社の9割以上を占める中小企業の経営者は訴えられる、とは思っていないでしょう。
- 日本にはそもそも「訴える」という文化が薄い
- 訴えても、費用と手間を考えると赤字になる場合が多い
理由はこの2つです。
1.「訴える」という文化が薄い
アメリカは訴訟大国なので、迷ったらとりあえず訴える、くらいのフランクな感じで訴訟が日常茶飯事で起きていますが、日本で訴えた・訴えられた人に出会う事ってあまりないと思います。
色々な理由はありますが、トータルすると国民性の違いですね。
争いを好まず、争うくらいなら少し自分が損をする方を選ぶ。
どちらが正しいのか、白黒着けるよりは「なぁなぁ」で済ませることをよしとする性質なので、あまり訴える事がありません。
このため、会社側も頭から「訴えられる」という感覚がありません。
なにをしても「NO」という人がいなければ、誰だって自分に都合のいいようにしますよね。
組織とはいえ、会社も同じです。
2.費用と手間を考えると赤字になる
訴えたところで、自分がそのまま法廷で意見を主張できる人はあまりいませんよね。
当然、訴えて法廷で争うのであれば弁護士の力を借りることが必要です。
そして、それは当然無料ではありません。
その費用をだれが持つのか?
また、調べたり裁判所へいく労力は、都市部ならまだ楽かもしれませんが、地方となるとそれだけで丸1日かかってしまいます。
これもある意味、地方と都会の格差かもしれません。
あとは、手間。
費用の問題よりも心理的にはこちらの方が大きいかも知れません。
要は裁判の手続きって面倒くさそう……という気持ちです。
大抵の人が初めて経験する事になると思うので、より面倒くさそう、という思いに拍車がかかるのかもしれません。
結局のところ、悪質な会社への対策は?
訴える、という部分を除くと悪質な会社への対策は2つに絞られます。
- 労働組合・労基署に相談する
- 辞める
やることはシンプル。
この2つの内のどちらか、です。
どちらでもない、第三の道は「泣き寝入りして、ガマンする」しかありません。
1.労働組合・労基署に相談する
社内に窓口があれば、そちらへ。
ただ、中小企業には労働組合が無い会社も多いので、社外の労働組合か労基署に相談しましょう。
社外の労働組合の頼もしいところは、会社に所属している訳ではないので、通常の労使交渉では「あの上司にはお世話になったから」とか「あの人と交渉すると、あとで仕事の納期がキツくなる」と、いった社内のしがらみが一切無いところ。
労基署はある程度証拠を揃えてから、相談する必要があるのでややハードルが高い印象があります。
また、当たり前ですがどちらに相談しても、会社側になんらかのアクションがあれば『誰がリークしたのか』犯人捜しが始まり、遠からず相談した本人がバレる可能性があります。
2.辞める
もともと悪質な有給対策をしてくる会社であれば、他の部分でもあまりよい労働条件は望めないのかもしれません。
思い切って辞めて、転職するのがある意味で最良の方法かもしれません。
労働条件がよい場所には人が集まり、よくない会社は人が居なくなり潰れる。
そういった自然な流れになるのがベストですね。
まとめ
- 有給休暇を取らせないのは違反ですが、骨抜きにする会社に対しての対策は現状では無し
- 訴えれば多少は勝機があるかもしれないが、費用負けすることも
- 我慢できない場合は辞めるのがおすすめ
この記事をざっくりとまとめると、以上の3点になります。
有給休暇の義務化にともない、休日を減らして有給を取らせようとする会社の姿勢には腹が立ちますが、真っ向から勝負してもパワー負けしてしまいます。
真っ向勝負にならないように、会社内でできる対策を勝手に取る、有給を取ることに理由は必要ないのでキッチリ申請するなど、自分の権利を使っていきましょう。