チップチューンと言う音楽のジャンルがある。
大きな属性としてはテクノになると思われるが、ファミコンに代表されるピコピコ音がノスタルジックな気分にさせ個人的に大好きな音楽ジャンルである。
ただ、いわゆる本家のテクノに比べるとどうしても世界と言うか市場が小さい。
ロックやラップに比べるなら、平たく言うとマイナーである。
今回はそんなチップチューンを語る上で日本のメジャー所である「YMCK」の曲を紹介しながら、その魅力に触れてみたい。
【2017.03.23 記事の訂正を修正】
【2017.09.26 チップチューン関連の記事を追加】
そもそもチップチューンって?
おもに1980年代に発売されたパーソナルコンピューターや家庭用ゲーム機に搭載されていた内蔵音源チップで作られる[要出典]。
それらをエミュレートした環境で作られたり、他の音源で「チップチューン風」の音楽が作られたり、他の楽器音と同時演奏されることもある。これらが広い意味でのチップチューンと見なされる場合もあるが、実機特有の雑音(ヒスノイズ・ハムノイズ・クリップノイズなど)や位相のずれを「実機らしさ」として評価される場合がある為「実機演奏された物だけがチップチューンである」という見方もある。
チップチューンに使われる音源には、「同時発声数が少ない」「オクターブレンジが狭い」「高域のピッチ精度が荒い」「制御システムのクロックに依存し、違和感なく演奏できるテンポが限られている」などの制約が多いが、その制約が独特の音や雰囲気を生み出す要因にもなっている。
音楽には全くもって詳しく無い上に作曲等もした事が無いが、ざっくり定義するなら「ファミコンやゲームボーイ等のBGMの様に”あえて”様々な制約の多い環境の中で作曲する音楽」が妥当だろうか。
wikiにも記載があるが、”技術的なハードルを乗り越えて音楽を作成する”環境自体に挑戦する事も醍醐味の1つなのかもしれない。
音楽、と言うかクリエイティブな作業全般に言える事かもしれないが、人間は制約が多ければ多いほど想像力が増すと言う話を聞いた事がある。
音楽と言う一定の制限の中で更に技術的な制約を課す、ゲームで言う所の一種の縛りプレイと言えるだろう。
チップチューンの魅力は各人色々とあると思うが、個人的には独特の音色が子供の頃の記憶を思い出させ、非常にノスタルジックな気分になるのが好きだ。
大抵チップチューンをやっているアーティストは、YMCKに限らずドット絵が好きだったりレトロゲームが好きだったりするので同好の士の様な感じがして親近感が湧く。
YMCK
スウィング・ジャズの要素を加えたテクノポップサウンドを、ファミコンのゲームミュージックのような8bit音源とボサノバのようなボーカルで奏でる作風が特徴。アルバムCDのジャケットもファミコンのゲームキャラクターのようなドット絵で描かれており、TVの音楽番組などでコメント出演する際も、実写映像ではなくドット絵アニメで登場している。
バンド結成は2003年5月。CD-Rの自主制作盤『ファミリーミュージック』がヒットとなり、2004年11月にウサギチャンレコーズから1stアルバム『ファミリーミュージック』をリリースする(1stアルバムは自主制作盤とタイトルが同じだが、アルバムの構成は異なる)。
メンバー
- Midori(栗原みどり)(ボーカル担当)
- Yokemura(除村武志)(作詞、作曲、編曲担当)
- Nakamura(中村智之)(映像・作曲担当)
個人的にイチオシのチップチューン音楽ユニット。
日本では知る人ぞ知る感が強いがチップチューンの世界ではめちゃくちゃメジャーだったりする。
YMCKの魅力的な点は数多いが強いて上げるなら3つ。
- チップチューンの世界観に合う女性ボーカルのPOPな歌詞
- PVの凝り方が凄い
- ライブでの演出
非常に個人的な話になるが、YMCKミュージックとの出会いは学生時代にまで遡る。
サブカルカルチャーの殿堂「ヴィレッジヴァンガード」の一角で試聴デモとしてかかっていたのがYMCKが1stアルバム「ファミリーミュージック」だった。
第一印象は、「なんだこのピコピコ音楽は……」とあまり捗々しくない印象だった。
それはそれとして、アルバムとしては値段が安かったのでファミコンのドット絵を意識したCDジャケットに惹かれて購入した。
それがYMCKとの、ひいてはチップチューンとの出会いとなった。
そんなYMCKの奏でるチップチューンを、先の3点を踏まえながら紹介してみたい。
(エントリー中の名称は全て敬称略)
とにかく見て、聴いてほしい”YMCK”のPV&名曲 5選
Magical 8Bit Tour
自主制作版を除けば記念すべき1stアルバムの1曲目。
YMCKと聞くと個人的には真っ先にこの曲を思い出す。
(CDには”ファンファーレ”と言うゲームのOPを意識した様な曲が実質1曲目として入っているが、短いOPとタイトルコールのみ)
曲は短いイントロの後、ボーカルのMidoriの声が入り始める。
恐らく作曲からかなり時間が経っていると思うが、チップチューン独特のピコピコ音にMidoriの声が被さり、不思議な一体感を醸しだす。
時間を重ねる度に進化をするYMCKの曲は名曲揃いだが、YMCKの代表曲と言えばまずはこの「Magical 8Bit Tour」を挙げたい。
PVの冒頭、恐らくYMCKの3人をイメージした光が降り立ちそこから曲のタイトルへと繋がっていくが背景のお城の書き込みの量は素人目にも半端無い。
そこからジェットコースターに乗って夢と魔法の国を旅していく。
(ご本人達による別の解説があれば申し訳ないが、歌詞で「子供の頃夢中で旅した、夢と魔法の国へと」とあるので勝手にそう信じている)
要所要所にもファミコンを意識した演出があり、レトロゲーム好きを喜ばせるPVである。
雲の形が全部一緒だったり、ジャンプしたらそのままの形進んだり、小ネタが効いている。
ただ、ファミコンの「それっぽい」感じを残しながらもPV自体はジェットコースターに代表される様にスピード感を感じたり、3人がコーヒーカップでくるくる回ったり楽しそうな仕上がりになっている。
YMCKの1stアルバムの1曲目でもあり、どちらかと言うとテクノっぽい曲が多いチップチューンの中では、ジャズの要素が強い曲だと思うので最初の1曲目におススメしたい。
左折して右折して
YMCKの中では比較的新しい曲。
自主制作を除く、7枚目のアルバム発売を記念して行われた初の単独ライブでも演奏された。
ライブに行く前まではチップチューンのライブってどうすればいいんだろうか、と非常に不安だった。
YMCKの曲調がすげーアップテンポな訳でも無いのでノリノリに飛んで跳ねてって言う訳にもいかないし……と思っていたらPVとボーカルのMidoriに合わせて手を挙げて曲げる振付があったので安心した。
歌詞の「左折して」の所で上げた左手を曲げて、「右折して」の所はその反対である。
PVが車が走っていく映像なので、歌詞共々疾走感を感じる曲になっている。
PVを見ていると車繋がりでシティコネクションを思い出すのは何故だろうと思っていたが、YMCKが運転している車のジャンプの仕方がシティコネクションの敵パトカーが吹っ飛ばされる時に似ていた。
シティコネクションは多分意識してはいないと思うが、時折鳴るSEが非常にファミコンっぽい上にPVで走っている車の影がチラついたり非常に作り込まれているのでPVだけでも一見の価値がある。
カレーだよ!
独特の世界観を持つYMCKのPVの中でも特にぶっ飛んでいるPV。
あと、ダッダッダッダッダ・カレーだよ!で始まるイントロは、数ある曲のイントロの中でも強烈に記憶に残る。
YMCKのPVは、コンセプトを3人で考えNakamuraが主に制作しているとの事。
ちなみにカレーだよ!ではMidoriが「ミスター味っ子」風のPVにしようと閃いた為、PV中の食材のサイズ感が決まったり、YMCKの3人が空を飛んだりするらしい。
そう言われると口からの光線を出したり巨大化して「うーまーいーぞー!」と言わんばかりにビルを倒しながら走ったり、最終的に宇宙スケールの展開になったりするのも不思議と理解できる気がする。
そう言いつつも、ライブパートではギターを持ってステージを走ったり、Nakamuraがドラムをやっていたり動きが可愛い。
完全に個人の主観だが、YMCK側でもカレーだよ!が気に入っているのかそれとも使いやすいからか、コラボする曲でたまに見かける。
カレーだよ!とは一切関係無いが、NakamuraはFAMILY DAYS発売記念の単独ライブにゲストとして登場したP.O.Pの上鈴木兄弟に唐突ラップを振られたが見事に応じ「一家に10枚 FAMILY DAYS!」と名言を残している。
なんでも出来る器用人なのかと思いきや、ラッパーがゲストで来るので急にラップをフられても良い様に家で練習してきた事を直後に明かしている。
非常に真面目な方である。
Tetrominon ~From Russia with Blocks~
ライブでPVを見るまで全く気づかなかったが某有名落ちモノゲーがモデルになっている一曲。
改めてタイトルを見ると確かにそれっぽいタイトルになっている。
CDで歌詞だけ追っているいると曲の全容が解からないが、PVを見ると世界の名画が流れるせいか少し悲しい曲の様な感じがする。
特に中盤のエジプトのファラオの辺り。
Nakamuraの初めて作った映像作品との事で最新の作品と比べると初々しく見えてしまうがそこも含めて味わいがある。
全体的にNakamuraの趣味全開のPVとなっているとの事。
聞いてほしい曲と言いつつ、このTetrominonはライブでの演出が素晴らしく毎回楽しみにしている。
「今日はみなさんと対戦しようと思います」と、Nakamuraが来場者とテトリスで対戦するのだが、最初は普通に対戦している様子だが途中から挙動がおかしくなりPVへ突入する流れは何回見ても鳥肌が立つ。
ライブを見る機会があれば是非とも最前列を確保し、対戦にお呼ばれしたい。
ちなみにテトリスとはゲームのタイトルであると同時にゲーム中で4列同時に消す事も”テトリス”と言う。
■■■■ ←このブロックが絶妙のタイミングで登場し、4列一気に消滅させる=テトリスするとかなり気持ちいい。
猫に囲まれて暮らしたい
カレーだよ!よりは若干インパクトが落ちるが、これも中々パンチ力のあるPV。
長めのイントロから始まるが、時折り挿入されるSEがやっぱりファミコンっぽい。
タイトル通り猫に囲まれたい欲求を素直に訴えた歌詞が可愛い。
歌詞もストレートで非常に解かり易い。
PVでもタイトル通り猫達が所狭しと活躍する。
完全に想像だが、PVもカレーだよ!っぽいのでMidoriの発案だろうか。
ライブ中もYokemuraとNakamuraで猫の鳴き声部分に合わせてキーボードで演奏したり映像にシンクロした演出が楽しい。
曲の紹介からは脱線するがYMCKのライブでは映像にシンクロした演出が良く行われ高い完成度を誇っている。
ライブを見ていいのかパフォーマンスを見ていいのか解からなくなるが、とにかくステージから目が離せない。
また、ライブ毎に専用のOPビデオが作成されているのでしっかり目に焼き付けておきたい。
基本的に1回使い切りなので再び日の目を見る機会はかなり少ない。
まれにチップチューンのイベントで蔵出しスペシャルとして一挙に公開される時があるので是非見ておきたい。
ライブでもMC的な立ち回りをする事が多いYokemuraの制作裏話や当日のライブの様子等も語られるので混雑は必至だ。
ダイジェストではあるがライブの映像がYMCK公式チャンネルにUPされているので一度見て頂きたい。
細切れではあるが、曲よりもライブの演出に注目して見てもらえると楽しさが伝わるのではないかと思う。
最後に
チップチューンと言うまだまだ狭い世界ではあるが絶大な人気を誇るYMCK。
音楽なので当然好みの問題もあると思うが音楽・PV・ライブでの演出、どれも本当に凄いので一度見て頂きたい。
ただ、ライブ自体は海外か都内が殆どなので遠方の場合は苦労する事になってしまうのがネックなのだが……。
特別に意識しない限りはある程度歳を重ねると音楽の趣味も固定されて同じ様な曲を聴いてしまうので、たまにはビレッジヴァンガード等に出かけて、新しい音楽に出会う様にしたい。
それでは、また。
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チップチューン関連の記事、他のサイトでもあります
黒めだかさん(id:takeshi0406)さんが書かれた記事で、タイトル通りゲームボーイを中古で購入し、チップチューンを演奏出来る様に改造する所まで、大まかな流れが解る様になっている。
素人がサクっと改造出来ないであろう事は想像に難く無いが、それでも”ゲームボーイを改造してチップチューンを演奏する”と言う行為に憧れを抱く。
何気に「中古で買ったゲームボーイは黄ばんでいる事が多いので、漂白してから使う」と言うこだわりに”愛”を感じずにはいられない。