2019年4月に始まった有給休暇の拾得義務化ですが、会社によって対応は様々です。
通常は、社内体制を変更して有給を取りやすくするために、仕事状況の共有や
属人化を避けるようにするはず。
ところが大手コーヒーチェーンのドトールでは今までの会社休日を出勤日へ変更し、本来は休みだった日を出勤日としました。
これでは露骨な「有給習得の義務化潰し」と、取られても仕方ありません。
この記事では、ドトールの休日変更が合法なのかどうかや、それだけではない、見落としがちな点について書きます。
記事を最後まで読むことで、単純に会社の休日が減るだけではない、見落としがちな点に気づけます。
会社休日→出勤日への変更は合法?
▼今回、問題となったニュース記事はこちら
ドトールでは会社指定の休日を祝日などに関わらず、今後は「119日」で固定すると発表しました。
有休休暇習得が義務化されたタイミングで、会社指定の休日数を変更するのは露骨な有給潰しと、取られても仕方ありません。
では実際のところ、この「有給潰し」は違法なのでしょうか?
実はグレーではあるものの、厚生労働省のガイドラインでは「制度の趣旨から望ましくない」と書かれているに留まっています。
つまり、違法か合法か、でいうなら「合法」です。
Q.7今回の法改正を契機に、法定休日ではない所定休日を労働日に変更し、当該労働日について、使用者が年次有給休暇として時季指定することはできますか。
A.ご質問のような手法は、実質的に年次有給休暇の取得の促進につながっておらず、望ましくないものです。
会社の休日は就業規則によって決められています。
そして、就業規則の変更には、労働者の過半数の同意か、労働者側の代表者の合意が必要とされています。
従って表向きとしては、就業規則が変更されたということは、労働者側と雇用者側の同意が得られているもの、となってしまいます。
実際は、労働者側の代表者と雇用者側の代表者がズブズブの関係ということもあるので、そうなると悲劇としか言いようがありません……。
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サービス業は有給が取りづらい
そもそもサービス業は、他業種に比べて有給の習得率が低い傾向があります。
傾向というよりは、はっきり言って飛びぬけて低いです。
厚生労働省の『就労条件総合調査』によると、サービス業の平均有給習得日数は5.2日。
なんとか義務化になっている分は習得できそうですが、この日数はそもそも多いのででしょうか?
実は、めちゃくちゃ少ないです。
逆に、有給を取りやすいインフラ関係の業種の、平均習得日数は14.2日。
同じ労働法の元、働いているのに約3倍もの開きがあるは、格差を感じてしまいます。
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会社休日→出勤日への変更で見落としがちな点
そんな有給格差や、法律の盲点を突くグレーな対応には疑問を覚えますが、それ以上に注意したいのが賃金の問題です。
会社休日を出勤日にするという事は、当然ながら稼働日が増えることになります。
と、いうことは働いている人の給料はどうなるのでしょうか?
仮に給料がアップするならば、まだ納得できますが実際はどうなのでしょうか。
給料据え置き、ということになれば年間の労働日数は増える訳ですが、実質1日辺りの給料はダウンすることになります。
数日稼働日が増えたところで、20日有給が支給される人は「どうせ消化しきれないし、別にいいのでは」と思うかもしれません。
ただ、ドトールはサービス業なので、人の入れ替わりもそれなりにあるのでは?
と、なれば有給の支給日が20日ではない人も多いはず。
そんな中での給料ダウン&有給潰し、となれば誰でも怒るのは当然です。
有休潰しだけに、目を奪われていると知らない間に給料まで下げられてしまいます。
まとめ
- 今回のドトールの対応は、労使間で合意があれば合法
- しかし、サービス業は有給が取りづらい業界No.1
- 更に、給料がそのままで稼働日が増えるというこは、実質的に給料ダウンとなる
この記事をまとると、以上の3点になります。
今回は大手のドトールの対応がニュースで取り上げられましたが、それ以外でも同様の対応をしている中小企業もあるのではないでしょうか?
働く方の気持ちとしては、有給潰しだけならまだしも……と、思ってしまうかも知れませんが、実質的に給料が下がるとなれば話は別です。
「さも一般的な事の様に説明しているけど、実際はこちら側に不利な条件」というのが、普通にあるので注意が必要です。
あまりにひどい場合は労基署に相談するか、転職も視野に入れた行動を。
片方が「No」と言えない関係は、次第に力関係がついてきます。
そんな時こそ、会社に対してNoを突き付ける「転職」というカードを切る時かもしれません。