有給休暇の義務化は、世界的に見ても低い日本の習得率を上げる為の方策ですが、強制となると、どうでしょうか?
単純に有給の習得率が上がれば会社も優良企業とされ、厚生労働省も「働き方改革ができている」と喜ぶかもしれません。
ただ、有給の義務化は働いている私たちの為の法律。
強制的な有給休暇の取得は、余計な仕事のしわ寄せを生みます。
制度が整っている大企業はともかく、制度が未熟な中小企業では今でも有給休暇の申請が出しづらいところも多いのでは?
この記事では有給休暇の義務化にともなって「有給は5日とってね。ただ、仕事量は減らないけど」という、中小企業側の無茶振りに現場が少しでも答えやすくする為の方法を書きました。
- 休め、休めと言われるけど、実際に休むと電話がバンバン鳴る
- 部下に有給を取らせたいけど、休まれると仕事が回らない
- そもそも有給義務化になる対象がわからない
この辺りの悩みを順に解決します。
改めて有給休暇の義務化について
2019年から施行された有給の義務化ですが、 厚生労働省の『わかりやすい解説』より、一言でまとめると『年10日以上の有給休暇を与えられる労働者(管理監督者含む)に対して年5日については、取得させることが義務付けられる』と、なります。
年10日以上の有給休暇とは、いわゆる正社員として半年間働き、その出勤日の8割以上を出勤すれば誰にでも発生する権利ですね。
逆に言えば年10日以下しか、有給休暇が与えられない働き方の人は義務化にはならないので、下手に「有給義務化なんで俺、明後日休ませないと罰則っすよ」などと、いうと確実に恥をかきます。
どんな働き方だと、何日間有給が与えられるのか?
違反した会社にとはどんな罰則があるのか?
具体的な時間や罰則の金額などはこちらの記事にまとめてあります。
有給休暇習得の現状
Expedia社のアンケートでは日本は有給休暇の習得率が調査対象の19か国中、最下位。
1つ上の順位であるアメリカは71%なのに対して、日本の習得率は50%と、大きく差をつけられています。
仮に生産性が『働いた日数×労働時間×効率』で決まるとしたら、日本はよっぽど効率が悪いことになってしまいます。
一体、なぜここまで低いのでしょうか?
極端に有給が取りにくい業種がある
原因の1つに『極端に有給が取りにくい業種がある』ことが挙げられるかもしれません。
業種によっては70%以上と、欧米なみの習得率をキープする一方、別の業種では35%以下と鬼の様に低い習得率の業種もあります。
世界最下位の有給休暇習得率の日本で、さらに最下位の業種とはいっても、会社ごとの取り組みの姿勢によって、習得率は大きく変わります。
あくまで「大きな視点で見た場合、有給が取りにくい傾向がある」業種もある、ということですね。
有給が取りにくい業種・取りやすい業種の記事はこちらです。
世界的に見ても日本は有給が取りにくい
もう少し、世界的に見ても日本の有給休暇の取りづらさは際立ちます。
そのもう一つの原因として休むことに罪悪感を感じる、ということが挙げれます。
誰かが働いている時に自分だけ休むのは申し訳ない、という気持ちが足を引っ張ります。
ただ、ちょっと待ってください。
全員で休んで全員で働くのが正解なのでしょうか?
人にはそれぞれ人生のステージがあり、年齢や環境によっても状況は違います。
従って、必ず土日祝に用事が済ませられる訳ではありませんし、仕事に気持ちが向かない時もあります。
そんな時に、働いている人全員が多かれ少なかれ持っているのが『有給休暇』です。
今日はあなたが休みますが、明日は隣の人が休むかもしれません。
罪悪感を感じる必要は一切ないので、どんどん有給を使っていきましょう。
中小企業の現場が有給休暇義務化に対応するには
現場で働く人間にとっては、有給が取りやすくなるのは喜ぶべき事ですが、無理やりとらされたり、余計なしわ寄せが来るのは困ります。
では、どの様にすれば有給を取りつつ、仕事のしわ寄せを無くせるのでしょうか?
会社側の対応を待っていたら、休めるものも休めなくなるので、現場サイドから動いていきましょう。
プレイヤーは動ける範囲で勝手にMyルールを作る
現場の最前線で働いている場合は、自分から同僚に有給を取って休む場合の対応をお願いするのがオススメです。
反対に、同僚が有給を取る時は率先して、仕事をカバーします。
こうすることで、ギブアンドテイクの関係を作っておきます。
一度、お互いにフォローしあえば、次からもっと頼みやすくなるのがポイント。
別に同じ部署の同僚である必要はありません。
適材適所で、部署を横断してフォローをお願いしても別に構いません。
その他、会社内で個人が勝手に有給を取りやすくする仕組みをつくる記事はこちらです。
管理職は自分のセクションに文化を浸透させる
管理職の場合はもう少し、取れる手段が増えてます。
個人プレーに走る管理職は意味がないので、一段上の目線で自分のセクションが『有給を取りやすい仕組み』を作ります。
具体的にはプレイヤーの時に自分で勝手に実行していたことを『有給を取る際のルール』としてセクション内に浸透させます。
この新しいルールをセクションの文化として浸透させられるかが、管理職の腕の見せ所ですね。
特に少人数のセクションであれば、目も行き届きやすく、文化も浸透させやすいはず。
会社が有給を取らせないときは
それでも有給を会社が取らせない時は、こちらもとしてもある程度、戦う姿勢を見せなければなりません。
もっとも、真っ当な会社であれば労働者の権利である有給をないがしろにはできないはず。
あまりにひどい様なら同業他社へ転職し、再起を図るのがベストです。
会社の休日を減らして、有給休暇を促進?
例えば毎年、夏季休暇が5日間あったものが今年からは0に。
替りに有給休暇の習得を進められる、などは労働者の不利益になる社員規則の変更にあたる可能性があります。
法律的に違法ではありませんが、厚生労働省の見解としては『望ましくない』と、なんとも心もとない回答。
ただ、それでもよくない状態なのは間違いないところ。
疑問に思うことがあれば、会社の労働組合・労働基準監督署・社外労働組合などに相談してみることが重要です。
忙しいから有給を取らせない?
会社には労働者からの有給休暇の申請に対して、時季を変更してもうように依頼する権利を持っています。
これは、その労働者が休むと、どうしても業務が回らなくなる場合に使うことができる権利です。
ただ、むやみやたらに乱発しても「権利の乱用」と見なされます。
逆に、会社として見た時に、1人休んだくらいで回らなくなる業務形態の方が問題です。
会社が持っている権利は『有給を取らせない』権利ではなく『有給を取ってもらう日付を変更する』権利。
従って「忙しいからダメ」などという理由は通りません。
しっかりと管理監督者が、有給の申請に対しては「〇月〇日以降の日に変更をお願いします」と、対応することが重要ですね。
まとめ
- 日本の有給休暇の習得率は諸外国と比べてかなり低い
- 中小企業の現場が、有給休暇義務化に対応していくには個人はやりやすい形で勝手に、ルールを作って有給を取る
- 管理職は有給が取りやすいルール・文化を作って自分のセクション浸透させる
この記事をまとめると以上の3点になります。
法律で決まっている以上に、仕事は休めるなら休みたいところ。
休んだ時間で遠くに旅行に出かけてもいいし、自分が好きなことをやるもよし。
休日だけじゃなく、自分の好きなタイミングで休める有給休暇という制度をぜひ使いこなして下さい。